2022年 09月 25日
適格請求書保存方式(インボイス)概要再確認
適格請求書保存方式(インボイス方式)概要再確認
Ⅰ)、概要
1,適格請求書保存方式とは
*買手が仕入れ税額控除を受けるためには、帳簿のほか売り手から交付を受けた「適格請
求書」などの保存が必要になる
2,開始時期
*令和5年10月1日より開始
3,適格請求書とは
*登録番号のほか一定の事項が記載された請求書や納品書その他これに類するもの。
*請求書や領収書、納品書、レシートなど名称は問わない
*様式は定められておらず必要な事項が記載されていればよい。手書きや電磁的記録で
もよい
Ⅱ)適格請求書の記載事項・記載の留意点
1,適格請求書の記載事項
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率毎に区分して合計した対価の額(税抜き・税込み)及び適用税率
⑤税率毎に区分した消費税額
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
2,適格簡易請求書
不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食業、タクシー業などに係る取引につ
いては適格簡易請求書でよい
①発行者の氏名・名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率毎に区分して合計した対価の額(税抜き・税込み)
⑤税率毎に区分した消費税額又は適用税率
3,適格請求書を発行できるもの
*税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られる
*課税事業者のみが登録を受けることができる
4,記載にあたっての留意点
①仕入れ明細書による対応
*買い手が作成する一定の事項が記載された仕入明細書等を保存することにより仕
入れ税額控除の適用を受けることができる
*この場合、記載する登録番号は課税仕入れの相手方(売り手)のものとなる点や売り
手の確認を受けることが必要
*確認の方法として次のような文言を入れることも一例。「送付後一定期間内に連
絡がない場合確認済みといたします」
②複数の書類による対応
*適格請求書は一の書類で全ての記載項目を満たす必要はなく、不動産賃貸取引を例
にとれば「賃貸契約書」に譲渡年月日以外の事項を記載し「通帳」で譲渡年月日を示
し合わせて記載項目を満たしていれば一の適格請求書とすることは可能
③取引先コードによる記載
*適格請求書には「発行事業者の氏名又は名称」及び「登録番号」の記載が必要だが
登録番号と紐付けて管理されている取引先コード表など相手方と共有しており、買
い手においても取引先コード表などから登録番号が確認できる場合は請求書等に取
引先コード表などを記載することで「発行事業者の氏名又は名称」「登録番号」の記
載があるものとして取り扱われる
④「税率毎に区分した消費税額等」の端数処理
*一の適格請求書につき、税率毎に一回の端数処理が認められる
*端数処理は「切り上げ」「切り下げ」「四捨五入」などの選択は任意
Ⅲ)売手の義務
1,適格請求書発行事業者の義務
①適格請求書の交付
取引先の求めに応じ「適格請求書」を交付する。
②適格返還請求書の交付
返品、値引き等、売上に係る対価の返還等を行う場合「適格返還請求書」を交付する
③修正した適格請求書の交付
交付したものに誤りがあった場合、「修正適格請求書」を交付する
④写しの保存
交付した「適格請求書」の写しを7年間保存する
2,留意点
<適格返還請求書の記載事項等>
①発行事業者の氏名は名称及び登録番号
②対価の返還を行う年月日
③対価の返還のもととなった取引の年月日
④対価の返還の取引内容
⑤税率毎に区分して合計した対価の返還の金額(税抜き又は税込み)
⑥対価の返還の金額に係る消費税額又は税率
<前月の売上値引きを差し引いて請求する場合>
*前月の売上に係る値引きについて、当月の売上から差し引いて相手方に請求する場合
前月の売上に係る適格返還請求書と当月の売上に係る適格請求書を交付
*この場合、適格請求書と適格返還請求書それぞれに必要事項を記載して一枚の請求書
で交付することも可能
<修正した適格請求書の記載例>
*交付した適格請求書に誤りがある場合、修正した適格請求書を交付する必要がある。
*交付方法は
①修正点を含めすべての事項を記載した書類を改めて交付する
②修正した箇所のみを明示した書類を交付する(当初に交付した適格請求書との関
連性を明らかにして)

を経過した日から7年間保存する必要がある
*交付した適格請求書の写しとは、そのコピーに限らず、その記載事項が確認できるも
の(レジのジャーナル、一覧表、明細表など)であっても差し支えない
3,交付義務の免除
以下の取引は交付義務が免除される
①3万円未満の公共交通機関である鉄道、バス、船舶による旅客の運送
②3万円未満の自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡
③郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
④生産者が農協、漁協、森林組合などに委託して行う農林水産物の譲渡
⑤出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品の譲渡
Ⅳ)買手の留意点
1,仕入れ税額控除の要件
①適格請求書等の保存が仕入れ税額控除の要件となる
課税期間の末日の翌日から2月経過した日から7年間保存する必要
②免税業者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れは原則として
仕入税額控除の適用を受けることはできない
*ただし経過措置が設けられている(後述)
2,保存が必要となる請求書の範囲
①売手が交付する適格請求書又は適格簡易請求書
②売手の確認を受けた適格請求書に代替えされる買手が作成する仕入れ明細書等
3,帳簿のみで仕入れ税額控除が認められる場合(その旨を帳簿に記載が要件)
①適格請求書の交付が免除される3万円未満の公共交通機関の運賃、自動販売機など
自動サービス機による課税資産の譲渡、郵便切手を対価とする郵便サービス
②適格請求書の記載事項を満たす入場券などが、使用の際に回収される取引
③古物営業、質屋、宅建取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から古物、
質物、建物を棚卸資産として取得する取引
④適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品を棚卸資産として取得す
る取引
⑤従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当に等に係
る課税仕入れ
4,その他の現行との相違点
①「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを
得ない理由があるとき」は言っての記載をした帳簿の保存のみで仕入税額控除が認め
られたが、インボイスの開始後はこれらの規定は廃止される
②現行では仕入れ先から交付された請求書等に誤りがあった場合、交付を受けた事業者が追記を
することができるが、適格者請求書保存方式の開始後はこのような追記は一切できない
5,簡易課税を選択している場合
*課税売上高から納付する消費税額を計算することから、適格請求書等の保存は仕入
税額控除の要件とはならない。
6,免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置
*適格請求書保存方式の開始後は免税事業者等からの課税仕入れは原則として仕入税
額控除の適用を受けることはできない
*ただし制度開始後6年間は、免税事業者からの課税仕入れについても一定割合を仕
入れ税額として控除できる経過措置が設けられている
*経過措置(期間・控除率・要件)
①インボイス開始直後3年間(令和5年10月1日~令和8年9月30日)
免税事業者からの課税仕入につき80%仕入れ税額控除可能
②インボイス開始後4年目から3年間(令和8年10月1日~令和11年9月30日)
免税事業者からの課税仕入につき50%仕入れ税額控除可能
③要件(請求書等の保存・その旨記載した帳簿の保存)
免税事業者からの区分記載請求書と同様の事項が記載された請求書等の保存
経過措置の適用を受ける旨(80%控除、50%控除)を記載した帳簿の保存
Ⅵ)登録申請手続き
1,登録を受ける(適格請求書発行事業者になる)には
①適格請求書発行事業者の登録申請手続きが必要
②課税事業者が登録を受けることができる。登録を受けなければ適格請求書を発行す
ることはできない
③通知される登録番号の構成は次の通り
法人番号を有する課税事業者はT+法人番号
個人事業者などはT+13桁の数字
④公表事項は国税庁適格請求書発行事業者公表サイトで確認することができる
2,登録申請のスケジュール
①インボイス制度開始時(令和5年10月1日)から登録を受けるためには原則として
令和5年3月31日までに申請手続きを行う
②「困難な事情がある場合」は令和5年9月30日(その困難の度合いを問わず5-2)
3,適格請求書発行事業者になると
①基準期間の課税売上高が1000万円以下となっても、登録の効力が失われない限り、
課税事業者のまま
②適格請求書の記載事項に登録番号が含まれますので請求書等の様式の改定、取引先
への登録番号の通知など準備が必要
Ⅶ)免税事業者の登録申請手続き等
1,免税事業者の登録申請手続き
①令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録
を受ける場合、登録を受けた日から課税事業者になることが可能(経過措置)
2,登録を受けるために登録申請を行う。
この場合「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要
3、登録申請期限は課税事業者と同じ
4,登録に当たっての留意点
①適格請求書発行事業者になると基準期間の売上高が1000万円以下となっても、登録
の効力が失われない限り消費税の申告が必要
②取引先から求められた時には適格請求書を発行しなければならない(交付義務)
③1の登録の経過措置を受ける場合、登録を受けた日から2年を経過する日の属する
課税期間の末日までは、免税事業者となることはできない。(2年間の縛り)
(登録を受けた日が令和5年10月1日の属する課税期間である場合を除く)
5,簡易課税を選択する場合の届出書の効力
①簡易課税制度は基準期間の課税売上高が5000万円以下であり、原則として適用を
受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を
提出している場合に適用される
②ただし、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属
する 課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録を受けた日から課税事業
者となる場合、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した届出書を
その課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税を適用することができる。
③課税期間の末日が土日祝日の場合でも提出期限は延長されない。
(Ⅷ)事前準備の基本項目チェックシート
| 1,適格請求書発行事業者の登録を受けるかの判断 □登録を受ける場合・受けない場合の検討 *登録を受けると、登録期間中は、基準期間の課税売上高が1000万円以下となっても課税事業者として申告納税が必要になる *登録を受けない場合、適格請求書を発行できない。ただし売り上げ先は制度開始から6年間経過措置が適用できるが、この期間終了後は特例を受けることができない 2,登録を受ける場合の売り手としての事前準備 □取引ごとにどのような書類を交付しているか確認 *雑収入も含め、適格請求書の交付が求められる取引かの確認 *適格請求書は、請求書、領収書などの名称は問わない。手書きでも可能 □交付している書類等につきどう見直せば適格請求書になるかの検討 *適格請求書は登録番号、区分毎の適用税率、区分毎の消費税額などが必要 *消費税額の一円未満の端数処理は一の適格請求書につき税率毎に一回。 *相互に関連する複数の書類で記載事項を満たすことも可能 *売り上げ先が作成する「仕入れ明細書」などにより支払いを受けている場合、 売り上げ先は、仕入れ先の確認をとれば、これらの書類により仕入れ税額控除を 適用することも可能。仕 入先の登録番号を記載。 □登録を受けた旨(登録番号)、何を適格請求書とするか、その交付方法などについ て売上げ先に伝え、認識を共有する □適格請求書の写しの保存方法や売上税額の計算方法の検討 *写しの保存は、コピーに限らず、電子データーや一覧表形式、複写式の控えなども 認められる *売上税額の計算方法は割り戻し計算と、積み上げ計算の二つあり割り戻し計算のほ うが利便性は高い
|
〇小規模事業者持続化補助金
環境変化への対応を支援する目的で特別枠を設定
詳細は小規模事業者持続化補助金事務局HPへ
以上

